シンガポールの法律では、本国で運転免許を持っている外国人が1年以上に渡って滞在し運転する場合、滞在が1年になる前にシンガポールの運転免許試験をパスしてこの国での運転免許を取得する必要がある。つまり、国際免許証を持っていても滞在期間が長くなると必然的に試験を受けなければならない。というわけで、受けてきた。
既に母国の免許を持っていて運転しているので、学科試験のみ。当たり前だけど全部英語。他にもこの国の共通語であるマレー語、タミル語、マンダリンも選択できるけど、全くわからないので事実上英語しか選べない。1ヶ月前くらいから堅い英語の過去問集をちまちまとやって準備はしてきた。日本の運転免許試験と同じく、常識の範囲で解答できるものがほとんど、1割くらいがちょっとひねった問題だったりする。標識なんかは日本と違うので注意が必要ではあるけど。試験時間50分の間に50問を解き、46点以上で合格らしい。単純計算して1問1分。これって短いのか長いのか、さっぱりわからない。
受験の申し込みはオンラインでする。IDと希望の受験日時、場所を入力送信して完了。結構いつも混んでるらしくて、私の場合も1ヶ月以上先だった。もし、滞在1年ぎりぎりでしかも毎日運転が必要な人なら早めに申し込まないと、運転できなくなってしまう。ぎりぎり1年以内に受験したとしても、万が一不合格の場合はまた申し込みからなのでやっぱり危険。まあ、運転する必要はないにしても、これもまた有効期限が1年の国際免許証が失効してしまう場合、合格後の免許申請時に日本の運転免許証を大使館で翻訳してもらわなければならないらしい。実は私もぎりぎり組で、不合格だと面倒なことになってしまう。余計、プレッシャーがかかったのはいうまでもない。
さて、試験会場はWoodland という文字通りの郊外にある。街の中心部からMRT(地下鉄)で30分以上もゆられていく。街のはずれから線路が地上に出て、駅と駅の距離がかなり遠くなり、車窓の景色もだんだん緑が多くなる。乗客も、外国人観光客やパリッと決めたビジネスマンが居なくなり、学校帰りの生徒達や買い物袋を下げた年配の人たちが多くなってくる。ローカル色がかなり濃い駅を出て、数分後にやってきたシャトルバスに乗る。試験会場までの道のりは、ずっと続くHDB(公団住宅)と工場らしき建物。本当に熱帯雨林を切り開いて、この大きい工業団地を造ったんだなーと思った。
到着したのはいいが、どこでどう受けていいのかさっぱりわからない。他の人たちの後を追って奥へどんどん入っていくと、どうも試験会場らしき張り紙。しばらく待っていると開場になったようでみんなが並び始めた。IDを見せると受験票を渡され、そこに書かれた番号のコンピュータの前に座る。この試験は、タッチパネルのコンピュータでやるのだ。簡単な説明があった後、試験が始まった。受験票に書かれているパスワードを入力すると問題が現れた。慎重に読んで一問一問答えていく。50問終わったところで「終了していいですか?」の画面。ええい!「Yes」を押す。「Passed」と表示。派手なファンファーレも「おめでとう」の一言もない。当たり前か、警察だもんな。時計を見ると15分しか経ってなかった。ということは意外と簡単ってことだ。
試験前の説明通り、合格した「外国免許からの切り替えの方は、直接受付まで」行った。銀行みたいに順番待ちのチケットを機械を押して受け取り、呼び出されるのを待った。なかなか呼ばれない。みんな結構時間がかかっているようだし、何か私の知らない書類を持ってる。やっと呼ばれて窓口に行ったら、「切り替えですか?用紙が要ります」と言われた。用紙って何?どこにあるの?すると窓口のおばさま、重い腰をあげて隣のデスクにあった紙を渡してくれた。(?実は試験会場にあったらしいby旦那)「記入してください」場所もなくて仕方ないので、がたがたのカウンターに紐で繋がったボールペンで記入。名前とか住所とかIDナンバーはいいとして、免許番号ってどれ?交付日と失効日を書かないといけないのに、平成年号の西暦がわからない。何か疾患があるか、とか、オートマ限定か、とか、免停になったことがあるか、とかいっぱい書く項目があって、何だかどう書いていいのかさっぱりわからない。ああ、日本の免許センターなら、ちゃんと記入台があって、用紙もちゃんと別々にわかりやすく置いてあって、ボールペンもいっぱい置いてあって、記入見本まであるのに。とりあえずサインをして、さっきの窓口に提出したら「ここにサインして」と言われ、またがたがたのカウンターで紐に繋がったボールペンでサインをした。ようやく受け取ってくれたおばさま、日本の免許証、国際免許証、IDなんかをコピーして、用紙に証明写真を張り、50ドル払うように言い、もたもたしている私のカードを読み取り機の奥まで差込み(何故かデビッドカードしか受け付けてくれない)、「住所を確認して」と切り取った紙を私に渡した。来る前に旦那に郵便番号間違っちゃダメだよと言われてたのを思い出し、スマホにメモしておいた番号を確認。最後にその用紙を渡すと「これで全部です」はあ、やっと終わった!どうもありがとう、と言うと心なしかむっつりしてたおばさまの頬がほころんだ、気がする。たったこれだけなのに、この疲労感はいったい何なんだろう。
とにかく、1ヵ月後、無事に免許証が郵便で我が家に届くのを祈るばかりだ。それともうひとつ、日本の免許証もそろそろ西暦表示をしたらいいのに、と本気で思った。
<追記> 無事、免許証届きました。よかったよかった。